売れるNFTの作り方!ICPuppiesで考える「なんとかSquad」




NFT市場が活性化してきたが、ほとんどのNFTは1枚も売れずに滞留したり、僅少な額で取引されていることだろう。仮に1次流通で売れたとしても、全く2次流通していないプロジェクトもザラである。

NFTは今や仮想通貨の取引を行わない層にも知れ渡り、日本人プロジェクトも乱立しており、激戦状態にある。

このような状況下で、売れるNFTとは何か、何がNFTの価値なのかについて考えてみたい。

OpenSeaのランキングを見ると、NFTの価値の基準を理解することができる。

NFTの価値を示す指標

すなわち、Volume, Floor Price, Owners, AssetsがNFTの価値を判断する上で重要な指標となる。

Volumeは取引高であり、画面を開くと当該指標でソートされていることから最も重要な指標であることが読み取れる。Floor Priceは当該コレクションのなかで出品されている中で最低価格、Ownersは保有者の数、Assetsは当該コレクションに属するNFTの数である。

このように見ると、NFTの発行枚数を10,000枚と設定しているプロジェクトが多く見受けられる。これは2017年にLarva LabsがローンチしたNFTプロジェクトの源流とも言えるCryptoPunks(クリプトパンクス)の発行枚数を参考にしていると考えられるが、これくらいの数量が「希少性」と「ネットワーク効果」を乗せた天秤が均衡する規模感として丁度良いのだろう。

また、それぞれのプロジェクトのNFT一覧を開くと、あることに気づく。

アレもコレも、同じキャラクターについて少しずつパーツが違うNFTが10,000枚発行されているというコレクションになっているのだ。

例えばこのBAYC(Bored Ape Yacht Club)のNFTが表示されている価格、例えば30ETHで取引されたとすると、執筆時点(2021/10/19)において概ね1ETH=38,000USD(米ドル)、つまり430万円程度の価値となる。

殆どの人は何故こんなNFTにこんな価値がついているんだろうか?と思うだろうが、実はこの形式のNFTは非常に強力なエコシステム・エコノミクスを有している。

今回はこの形式のNFTについて筆者が最近参加したICPuppiesというコレクションを例に使って理解を深めたい。

ちなみに、この形式で発行しているNFTはしばしば「〇〇Squad」という名称が付されているため、筆者は「なんとかSquad」と呼んでいる。

なお、Squadというのは仲良しグループというような意味合いであるとのことだ。

ICPuppiesとは

ICPuppiesは10,000匹のランダムに生成されたユニークな8ビットの子犬のコレクションで、Dfinity(ネイティブトークンはICP)というブロックチェーンの上で発行された。決して人気があるとは言えないが、地味にTwitter民の心を掴んだコレクションで、意外とアイコンに設定している人も多い。

2021/10/8に10,000枚のMINT(ミント)が開始された。MINTとは日本語では「鋳造」という意味だが、新しいトークンを発行することがMINTと呼ばれている。

1次流通は既定量のICPを支払うことで、10,000枚の中からランダムな1枚をMINTすることができるという仕様になっている。

人気のあるプロジェクトでは購入者がBOTを利用して早押しするため、人力では1枚も買えないままに数秒で売り切れてしまうが、ICPuppiesは売り切れるまでに12時間程度を要した。

その後、2次流通市場がオープンし、継続的に取引が行われている。なお、1次流通・2次流通共にEntrepotというマーケットプレイスを利用している。

何故面白いのか、何故価値が生まれるのか

では、この犬の画像コレクションが一体何故面白いのか、何故価値が生まれるのかについて考察してみよう。

そこには実は巧妙なNFTのトークンエコシステム・エコノミクス(トケノミクス)が用意されている。

希少性

NFTの価値の大前提として希少性が挙げられる。前述のとおり、ICPuppiesのNFTは全部で10,000枚の発行である。

同じNFTを複数枚発行したり、そもそも発行可能枚数を表示していなかったりするプロジェクトのNFTが無価値化している例は意図的に探さなくても多数目にすることだろう。

それらはNFTのトークンエコノミクスの形成に失敗している典型例だ。

NFTを保有したことがない人には違いを認識しにくいかもしれないが、希少性がなければGoogle検索して表示されるjpegファイルと同じなのである。

フロア価格

フロア価格とは、当該コレクションの最低価格のことを差す。

コレクションの人気が上がれば、特に魅力的でもないNFTであっても欲しいと思う人が増えるため、フロア価格は上昇する。

単純にフロア価格が上昇することで高額で売却できる可能性が高まるので、それだけでも面白い。

出品一覧(低額順抜粋)

ICPuppiesのフロア価格は2021/10/20時点までの観測では、1.4ICP程度まで上昇した後、1ICPを切るまでに下落している。

レアリティ

ICPuppiesのレアリティは以下の画像の右上に表示されたNRIという指標で表されている。このNRIの値が大きいほど珍しく、小さいほど一般的である。

執筆時現在、最も高額で取引された実績があるNFTは最もNRIが高いものである。

取引成立一覧(高額順抜粋)

とは言え、必ずしもNRIが高ければ価値が高いわけではない。

例えば、筆者が保有するNFTの中の1枚に以下の犬がいる。

NRIの表記の部分にカーソルを合わせてクリックすると、NRIの内訳を確認することができる。

NRIから考えるとこちらは平凡な価値のないNFTのように思えるが、BODYの項目を見るとSpectralという特性は出現率が1%であり、レアリティが高いことがわかる。つまり、青い犬はコレクション全体で100匹しかいないのだ。

実際に青い犬は高額で取引されており、価値の合意が形成されている。

取引成立一覧(抜粋)

つまり、このNFTは一般的な特性を含むことで総合的なレアリティは低いものの、Spectralの特性に価値を感じている人が多数存在することから価値が高いのである。

価値の発見

Spectralの出現率は1%であると前述したが、以下のHEADのMohawk_greenの出現率も1%である。

にも拘わらず、2.69ICPで出品されて約定していない。

出品一覧(抜粋)

このように、特性のレアリティが高くてもユーザーの間で価値の合意が形成されなかった特性については評価されないのである。

一方で、以下のNFTはNRIが0.0%と、究極に一般的で全くレアな要素の含まれていないが、それが逆にレアであるという評価を受けて、高額で取引が行われた。

取引成立一覧(抜粋)

このように、運営はレアリティを定めてはいるが、必ずしもそれに従うことなく、ユーザーの評価により価値が決定されているのである。

つまり、NFTの価値を決めるのはプロジェクトではなくユーザーに委ねられているのだ。

筆者はここに2次流通市場が成立する仕掛けがあると理解している。

プロジェクトが価値を固定化しないことにより、価値の合意がないままに2次流通市場がオープンする。

その後、参加者が取引を行う中で傾向が示され、特定のNFTに価値が産まれる中でミスプライスが多発する。これによりMINTに参加できなかった・しなかった投資家も利益を得ることができるし、ミスプライスを発見するために2次流通市場を探索する参加意義が発生する。

また、特定の時点において評価されていなかった特性も後ほど見直されたり、逆に評価されていた特性が価値を失うこともあるだろう。このような参加者の価値観の変化による価値の変動も、2次流通市場の活性を維持させるための要素となるはずだ。

このような仕掛けを用意することにより1次流通・2次流通を含めて長期間に渡ってNFTが取引される仕組みが形成される。

NFTにおいて「なんとかSquad」ばかりが価値を持っている現状を見ると、このようなエコシステムが鉄板の設計なのだろう。

付帯価値

ICPuppiesのロードマップを読むと、売上高の一部が子犬を支援する団体に寄付されたり、ゲーム化してその中でNFTを利用できるようにしたりという権利を設定している。

このように、NFTに追加の権利を定めることで価値を持たせるプロジェクトも多い。

前述のBAYCにおいても、商業利用権やNFT保有ユーザーのみが参加できるThe Bathroomへ落書きができる権利などが付されている。

手頃な価格

ICPuppiesの発行価格は0.4~1ICP(早期MINTほど低額)であった。執筆時点で1ICPが5,000円程度なので、2,000円~5,000円程度である。

また、前述のBAYCにおいては0.08ETHで、30,000円程度である。

NFTを購入したことがない人には理解できない感覚かもしれないが、運営・エコシステム・デザインが信頼に足りる前提であれば、お手頃で1回やってみようかなと十分に思える価格である。

ちなみに、BAYCの現在の価格からすると当時MINTした人はとんでもない含み益を得ている。

何故そこまで流行らなかったのか

あまり流行らなかった理由としてはDfinityというプラットフォームがマイナーであること、次にそれを踏まえてコミュニティの人数の少なさが挙げられると考えられる。

執筆時点でTwitterおよびDiscordの参加者は5,000人程度であり、10,000枚に対して1倍を割り込んでいる。

例えばBAYCのTwitterのフォロワーは20万人程度と、大きな差がある。

一般的なコミュニティの盛り上げ方としては、プロジェクトのボートメンバーを豪華にする、著名なVCから資金調達を行う、革新的なプロダクトをローンチするなどが初期段階の準備となる。

次に、ローンチ前にはTwitter、Discord、Telegramなどに人を集めて、そこに留まらせることが重要になる。

特にDiscordではroleと呼ばれる役職を設定することができ、たくさんの人を呼び込んだ人などに”OG”と呼ばれるリーダー的な役割を与えて、プロジェクトの支援者として活躍してもらうなどの対応が行われる。

もちろんOGには相応の対価、例えばNFTを無料で付与するなどの対応がとられるので、プロジェクトとの間でWin-Winの関係になる。

Discordの中ではユーザーは情報を交換したり、他のプロジェクトとコラボしたり、Memeを披露したりしてローンチを楽しみに待つ。

このような活動を積み重ねてローンチまでに人を増やし、いかに需要を高めるかがカギになる。

ちなみにOGは何の略なのかについてはイマイチ確信はないが、おそらく”Original gangster”のことだと思われる。この場合、日本語訳としては第一人者くらいの意味である。

結論

ここまで見て、何となく発行したNFTと「なんとかSquad」にはエコシステム・エコノミクスの設計に大きな差があることが理解いただけただろう。

ファンジブルトークン(FT)同様、NFTにおいてもトークンエコシステムやエコノミクスの設計がトークンに価値を持たせるためにマストな要件なのである。

国内でも大型IPを利用してNFTを売り出しても全然売れていなかったり、2次流通市場で超低額で出品されたまま誰も購入されていなかったりするのをしばしば目にするので、トークンエコシステム・エコノミクスを意識した設計でデザインすると良いだろう。




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