電気・ガス事業者に衝撃!収益認識基準で検針日基準はNG!




やっぱり検針日基準はダメ

2020年12月25日に企業会計基準適用指針公開草案第70号(企業会計基準適用指針第30号の改正案)「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」が公表された。

2.重要性等に関する代替的な取扱い
(8)その他の個別事項 (電気事業及びガス事業における毎月の検針による使用量に基づく収益認識)
176-3.検針日基準による収益認識を認めた場合、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせないとは認められないと判断し、会計基準の定めどおり、決算月に実施した検針の日から決算日までに生じた収益を見積ることが必要であるとの結論に至った。

企業会計基準適用指針公開草案第 70 号(企業会計基準適用指針第 30 号の改正案)「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」176-3項

比較可能性を大きく損なわせないとは認められない・・・!?

かまいたちの「もし俺が謝ってこられてきてたとしたら絶対に認められてたと思うか? 」並にわかりづらいが、つまりは検針日基準は比較可能性を損なうからダメだということだ。

もちろんコレは公開草案であるためまだ変更の余地はあるが、ASBJ(企業会計基準委員会)により公式に否定されたことについては電気・ガス業界に大きな衝撃が走ったことだろう。

検針日基準とは何か

電気事業者やガス事業者では業界特有の「検収日基準」という方法で売上を計上している。

例えばガス会社では月に1度「検針」という作業をする。家や店舗に取り付けられたメーターを確認し、どれくらいガスを使用したかを測定する作業だ。

エリアごとに10日、15日、月末と実施日を分けて検針(分散検針)することもある。

検針しなければ販売した量を把握することができないため、正確な売上高を計上するためには合理的な収益認識基準である。

しかしこの場合、決算月においては10日、15日に検針したエリアについて同月の残りの日数分の売上を計上していないことになる。そしてその分は翌期の売上に入り込むことになる。

「なんだ、ダメじゃないか!」という風に思えるが、一方で当期の売上には前期に取りこぼした売上が入り込んでいるので、毎期取り込まない売上が大きく増減しないのであれば「大体OK」とも言える。

法人税法上も検収日基準は認められており、これまでは特に問題なく業界慣行として処理されてきた。

また、この理屈で監査上の頻出論点である「販管費のカットオフエラー」を免れている会社も少なくない。

販管費については例えばオフィスの賃料やら通信料やら雑多な費用が含まれていて、決算の期間中に請求書が届いたり、決算の締めの後に請求書が届いたりするけれども決算月までの費用はその決算に取り込まないといけない。つまり、3月決算なら請求書が5月に届こうとも、摘要欄に「3月分」と書いてあれば本当は3月の費用として計上して決算をしないといけないのだ。

とは言え現実的に無理な部分もあるので「毎期ズレてて金額の増減もあまりないからOK」という、なあなあな論法で監査をパスしていたりする。毎期同じくらいの金額が計上されるから、前期から当期に紛れ込んできたカットオフエラー分が当期の見積もり計上分だと言ってしまえば、販管費に重要性がない会社であればコレで監査調書もOKが出てしまうだろう。

このように「カットオフ」という論点は、なんとも言えないグレーゾーンを含むのである。

これまでの経緯

収益認識基準は基本的にはIFRS第15号の内容で作成するが、比較可能性を損なわない範囲で業界実務慣行を斟酌して「代替的な取扱い」という特例を作るよ!という方針である。

検針日基準の取り扱いについては、以下のように決めかねていた。

(毎月の計量により確認した使用量に基づく収益認識)
188.現在、毎月、月末以外の日に実施する計量により確認した顧客の使用量に基づき収益の計上が行われ、決算月に実施した計量の日から決算日までに生じた収益が翌月に計上される実務が見られる。2017 年公開草案に対して、決算月に実施した計量の日から決算日までに生じた収益を見積ることの困難性に関する意見が、電気事業及びガス事業から寄せられた。審議においては、当該見積りの困難性について代替的な取扱いを検討し、決算日までの顧客による使用量を確認できない場合や、計量により確認した使用量に応じて複数の単価が適用される場合等、当該見積りが困難となり得る状況に対して検討を行ったが、当該見積りの困難性に係る評価が十分定まらず、代替的な取扱いの必要性について合意が形成されなかった。今後、財務諸表作成者により、財務諸表監査への対応を含んだ見積りの困難性に対する評価が十分に行われ、会計基準の定めに従った処理を行うことが実務上著しく困難である旨、当委員会に提起された場合には、公開の審議により、別途の対応を図ることの要否を当委員会において判断することが考えられる( 会計基準第 96 項参照)。

企業会計基準適用指針第30号 収益認識に関する会計基準の適用指針 188項

これに対して、電気事業連合会・一般社団法人日本ガス協会においては「検針日基準」で処理できなくなると一大事なので、要望書を提出している。

どちらにおいても単に意見を述べるだけではなく、実際に見積もり収益計上を実施して実績と比較した結果、全然上手くできませんでした!という努力の結晶というか、半ば泣き落としのような抗弁が含まれている。

しかし、コレに対してASBJがNOを突きつけたのである。

どうやって会計処理するのか

電気事業・ガス事業において「検針日基準」が代替的な取扱いとしては認められなかったが、以下のような代替的な取扱いが定められた。

5.重要性等に関する代替的な取扱い
(8)その他の個別事項 (電気事業及びガス事業における毎月の検針による使用量に基づく収益認識)
103-2.電気事業及びガス事業において、毎月、月末以外の日に実施する検針による顧客の使用量に基づき顧客に対する請求が行われる場合、会計基準第 35 項の定めに従った収益を認識するために、決算月に実施した検針の日から決算日までに生じた収益を見積る必要がある。当該収益の見積りは、通常、同種の契約をまとめた上で、使用量又は単価(若しくはその両方)を見積って行われるものと考えられる。当該使用量の見積りについては、決算月の月初から月末までの送配量を基礎として、その月の日数に対する未検針日数の割合に基づき日数按分により見積ることができる。また、当該単価の見積りについては、使用量等に応じた単価ではなく、決算月の前年同月の平均単価を基礎とすることができる。

企業会計基準適用指針第30号 収益認識に関する会計基準の適用指針 103-2項

これによれば、契約ごとに「未検針分見積り収益=(按分した日数×決算日の前年同月の平均単価)」を計算すれば会計上正しい処理をしたことになり、監査上も認められるということであろう。

つまり、翌期になって実績が出て比べた(或いは監査人がバックテストをした)結果、全然ズレていても代替的な取扱いに沿って正しく処理しているのでOKということになるのだろう

検針日基準を認めない意義はどこまであるのか

検針日基準自体は業界の実務慣行として長期的に認められてきた処理であるし、毎期継続的に適用しているのであれば利益操作の可能性も低い「カタい」収益認識基準である。

筆者の個人的な見解としては、カットオフエラーとなる売上(最終検針日以降期末日までの売上)について、電気・ガス業界においてそこまで大きな変動が認められないのであれば、検収日基準で処理することを認めても良いと思う。

もしくはカットオフエラーとして前期から当期に紛れ込んできた分を当期の未検針分の見積り収益であるという建前で認めてあげても良いのではないかと思う。

また、例えば期末日前の特定時点までに検針をしていれば検針日基準でもOKなどのルールを決めて、カットオフエラーとなる日数を限定することで大ブレを防ぐような施策も良いかもしれない。

むしろ売上を見積りで計上するという方が気持ち悪い。収益項目において当たらない占いを強要するのはどうなのだろうか。

会社としても翌期に決算調整で入れた売上を消して検針結果で差し替えるというのも相当な手間となるだろう。

最終的な着地が気になるところである。




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